式(8.6)を実用計算に便利に用いるために,次のような置き換えを行い,式を簡単にする.
- I/lを剛度とよび,記号Kで表す.
- 任意に選んだ部材の剛度K0を基準にとり,これに対する各部材の剛度Kの比を剛比(stiffness ratio)とよび,記号kで表す.
- 各部材の剛度は,K=I/l=kK0と表せるから式(8.6)を書き直すと
となる. - Eの値は非常に大きく,θやRの値は非常に小さいので,∞×0に近い計算を避けるために,次の置き換えを行う.
φ(ファイ)とψ(プサイ)はそれぞれ,たわみ角モーメント,部材角モーメントと名付けられているが,θ,Rと混同しない範囲で,たわみ角,部材角とよぶことも多い.ここで,ψの符号は,Rと逆になっていることを記憶にとどめておこう. - φとψを用いて,式(8.9)をさらに書き換えると,次式を得る.
これを実用端モーメント式といい,実際の計算はこの式で行うと便利であるので,記憶にとどめておくとよい.
部材の一端がヒンジの場合は,MAB=0またはMBA=0の条件を用いてφAまたはφBを消去して,別の公式を導くこともできるが,それがなくても解けるので,記憶すべき公式を増やさないために,ここでは導かない.